小説 『渦戦士エディー』 第1話 ~渦の覚醒~ |
21世紀現代。 人類は科学文明の発達により、その栄華を極めていた。 一方で、有害物質を大気や海にタレ流し、多くの人々は異常気象や地球温暖化など自然界からの警鐘に目を向けることなく、自らの栄華に酔いしれていたのである。 日本の片隅で巨大な悪が動き始めている事を知らずに・・・・・。 |
徳島県。勝浦川河川敷。 この日、川の両岸におびただしい数の『狸』の死骸が発見されて騒動になっていた。 橋の上は野次馬で溢れかえり、地元テレビ局も中継も繰り返し放送していたのである。 「今朝、ここ勝浦川河川敷でおびただしい数の狸が死んでいるのが発見され、県の衛生局は、その原因について調査を始めると発表しました。」 現場から中継をするレポーターに近所の住人であろうか、爺さんが歩き出て来てカメラに映り込む。 「合戦じゃ!!」 いきなりそう叫ぶとさらに爺さんがまくしたてる。 「阿波の狸合戦じゃよ!!「金長狸」と「六右衛門狸」が合戦をやったんじゃ!!」 「これは何かの凶兆に違いないぞっ!!」 「ちょ・・・ちょっと・・・困ります、お爺さん・・・・」 困惑するレポーターではあったが、まさしくこの場所はその昔、「阿波の狸合戦」が繰り広げられたと言われる狸たちの古戦場だったのである。 その夜。 とある山の中。街灯ひとつない山道を一台のトラックが登って来る。 真冬でしかも夜間であるのにも関わらず外は激しい雷雨である。 雷鳴が轟き、稲光が時折辺りを照らし出す。 ラジオからは今朝の勝浦川の一件が流れている。 「・・・今朝未明に報道された狸の大量死事件で県の衛生局は、死んだ狸の体内から通常自然界では存在しない有害物質を検出したと発表。今後も詳しい調査が必要としながらも、人為的な災害も視野に入れた原因究明に乗り出すと・・・・・・プチッ おもむろにラジオを消した運転手がつぶやいた。 「やれやれ、この分やったらワイらモグリの産廃業者の締め付けがますます厳しなるなー」 「それにしても、真冬に雷なんておかしいで。だいたい仕事に差し支えるわ。」 煙たそうにタバコを燻らす見るからに怪しいなりをしたこの男は、無許可でゴミを投棄する不法な産廃業者であった。 幌で隠されたトラックの荷台には、ドラム缶やパソコン、家電、古タイヤなどが満載されている。 やがてトラックが停車したガードレールの無い崖下には以前に投棄したものであろう産廃物が散乱している。 男は合羽を羽織ると手馴れた様子でトラックの荷台から不法な積荷を次々とその場所へ蹴り落としていった。 「今日はこれで最後やっ」 ガンッ!! 長靴で蹴り出されたドラム缶がガラガラと音えお立てて崖下に転がり落ちていく。 「ここももう一杯やなぁ。そろそろ他の場所を探さなあかんなぁ。」 そう呟く男の傍の草木がガサガサと揺れたかと思うと何やら黒い影が飛び出して来た。 一瞬驚いた男であったが、目をこらしてよく見ると何やら動物の様である。 「なぁんや、タヌキか。」 「こんな所でウロウロして拾い食いなんかしたら、お前も仲間みたいに死んでまうでぇ」 「ほななっ。」 そう狸に話かけた男はそそくさとトラックを発進させてもと来た道を猛スピードで走り去って行った。 ザァーッ 雨のおとだけが響く漆黒の闇に戻った不法投棄現場に稲光が走ると狸がシルエットで浮かび上がる。 と・・・次の瞬間!! ゴロゴロ ピシャァァァァーッ!! 落雷である。 しかも、それは狸を直撃した。 フギャァァァー!! 一瞬ギャグ漫画の電撃シーンの骨が浮かび上がる描写が見えたかと思うと、狸は落雷の衝撃で崖下に飛ばされ絶命してしまったのである。 横たわる狸の亡骸にドロドロとした物体が覆いかぶさってゆく。 落雷の熱で溶解した産廃の有害物質であろうか、それはやがて狸の全身を呑み込み覆いつくしてしまった。 次の瞬間、何かの鼓動が聞こえてくる。 ドクン ドクン それは、蘇生した狸の心臓の鼓動の様でもあり、何か得体の知れない悪魔の胎動の様でもある。 そしてドロドロとした物体がまるでアメーバのようにうごめき始めたかと思うと、意思を持った生き物のごとくモコモコと盛り上がり、ぬうっと人型を成していく。 不気味に光る二つの光点は目の様でもあった。 |
その物体は、グルルルと唸り声に似た音を発したかと思うと一瞬で何処かへ走り去った・・・いや消え去ったのであった。 翌日。 昨夜の嵐はウソのように過ぎ去り、雲ひとつない晴天である。 徳島市内のイベント会場では人気のローカルヒーローショーがクライマックスを迎えていた。 徳島騎士団ヒーロースリーの文字が見える。 今まさにヒーローの必殺技が炸裂、悪者たちが退散して行く。 「オレの名は『アワ・レッド』!!」 「私は『ウズ・ブルー』!!」 「そして『スダチ・グリーン』!!」 「我ら、『徳島騎士団ヒーロースリー』!!これからも応援よろしくなっ!!」 お決まりのヒーローたちの名乗りとともに会場のちびっこたちは大喜びである。 やがてショーの後の写真撮影会や触れ合いを終えたヒーローたちが控え室に帰って来る。 冬とはいえ、ステージを一回こなすと汗をかく。 マスクを外すとひんやりした外気が心地よい。 タオルで汗を拭くとスポーツドリンクを一気に飲み干して談笑が始まる。 それぞれが、役から個人に戻る瞬間である。 「今日のチビッコたちはノリがよかったからついつい張り切っちまったな」 アワ・レッド役のヒロが切り出す。 阿波野 英雄(アワノ ヒロ)、英雄=ヒーローと書いてヒロと読む。 チームのリーダーで、メンバーからは「ヒロ」と呼ばれている。 「ったく、ヒロときたらマジでキック入ったぜぇ」 悪役のメンバーが少し大げさにお腹の辺りをさすりながら苦笑する。 「ハハハ、わりぃわりぃ」 二人の会話を傍で聞いていた女性メンバーの一人がいたずらっぽい笑顔で近づいて来た。 「ヒロー、今日も送ってもらっていいかな?」 スポーツドリンクを差し出しながら微笑みかけてくる。 祖谷乃 かづら(イヤノ カヅラ)、ウズ・ブルー役のスーツアクターだ。 メンバーからは「ドク」と呼ばれているが、その理由がこの物語を大きく動かせていくことになるのであるが今はまだ誰もその事を知るよしもなかった。 |
いいぜ、りょーかい。」 何気なく返す言葉に先ほどの悪役メンバーが突っ込みを入れる。 「やれやれー、レッドとブルーはステージが終わっても仲良しだなー。」 「こーら、茶化してると今度はパンチを入れっぞ!!」 ヒロが冗談まじりに凄む。 「ひえ~っ、正義の味方にはかないませ~ん。」 「はははははっ」 最後は控え室が全員の笑い声に包まれた。 「じゃあまたなー、お疲れ~っ!!」 「お疲れ様~っ!!」 駐車場で解散したメンバーたちと別れて、ヒロとドクの乗った車は吉野川の土手を西に向かう。 しばらく今日のショーの話題を交わした二人だったが、話が途切れたのを見計らってドクが切り出した。 「ねぇねぇ、いつもの仕事の続き始めてもいい?」 「ははは、ど~ぞ。」 ローカルヒーローを演じる団体の多くは営利目的での活動はしていない。 そのため、ローカルヒーローを演じる事とは別に本業の仕事を持っているのが常である。 この二人も例外ではないのだが、ドクの場合その仕事が少々変わっている。 後部座席からアルミケースとノートパソコンを取り出すと、アルミケースを開けて手馴れた手つきでパソコンと接続していく。 開けられたアルミケースには、モニターが整然と配置され、配線が所狭しと張り巡らされていて何やら複雑は装置であることは一目瞭然である。 ドクはこのアルミケースをいつも「コアBOX」と呼んでいる。 |
何かの研究装置の様であるが、これこそ彼女がドクと呼ばれる所以なのである。 「お待たせ~っ、私のエディーちゃん。」 装置を起動させたドクが、コアBOXの中央で一際青白く光り輝くパーツらしき物をツンツンと優しく指で突いて語りかけている。 何も知らない人間が見たら突飛な行動なのだが、ヒロにとってはもう慣れっこなのである。 「はははっ、いつもの事だけど大した熱の入れようだな。」 さらりと言葉を返すヒロに、ドクが自慢げに続ける。 「当然でしょ!!エディーちゃんは化石燃料にとって変わるかも知れない全く新しいエネルギー源なんだから。」 「いつか枯渇する事は間違いない化石燃料に頼っていたら、今日の子どもたちの未来も不安でしょ。」 「その点、ウチのエディーちゃんは大気や海の自然エネルギーを波動に変えて・・・。」 ドクの講釈に、またかという感じでヒロが割って入る。 「ナントカを、どうとかして融合させて渦状に集積する。」 「名付けて『渦の核(エディー・コア)』だろ?」 「で、それは鳴門の渦を見ていてひらめいたんだよな?100回は聞いたよ。」 「あら?そうだったかしら?うふふっ」 「あははははっ。」 いたずらっぽい笑顔で顔を覗き込むドクに、ついついヒロも笑ってしまった。 「けどさぁ、どうしてさっさと学会にでも何でも発表しないんだよ?」 「ノーベル賞もんだぜ、きっと。」 ヒロが真面目に問いかける。 「たしかに『エディー・コア』は夢のエネルギー源だけど・・・」 「発表に踏み切るには、まだまだ解決しなきゃならない問題が山積しているのよ。」 「なにしろ、コントロールする事が難しいの。それに・・・万一エネルギーが解放されたら人体にどんな影響を及ぼすかも全く検討がつかないし・・・・」 ポタッ 何やら車のフロントガラスにペンキの雫の様な汚れが落ちてきたが、二人は気づかずに話込んでいる。 「原子力も・・・結局『兵器』として進化してしまったわ。」 ポタポタポタポタッ 汚れた雫は次々と落ちてくるが、まだ二人は気づかない。 「私は『エディー・コア』を原子力の二の舞にはしたくないのよ・・・。」 「なるほどねぇ・・・、しかし何でこんな才女がローカルヒーローなんてやってるんだか・・・」 ヒロが苦笑したその時だった。 ドンッ!! 何かがボンネットの上で跳ねたかと思うと数メートル前の路上に落下したかに見えた。 「な、なんだぁ!?」 咄嗟に急ブレーキを踏むヒロ。 キィィーッ!! 落下した物体に衝突寸前で車は停止したものの、その物体に視線を送った二人は我が目を疑った。 それは、人の形をしているが、髪を振り乱したその顔は骸骨そのものである。 昨夜、落雷に打たれた狸を包み込んだ物体が形を成した狸の怨霊とも言うべき悪の化身であった。 |
「ま・・・マジかよ・・・」 ヒロの言葉が終わるか終わらないかの一瞬の間に、そいつは高くジャンプしたかと思うとドンッと車のボンネットに飛び乗って来た。 フロントガラスを挟んでまさに至近距離に迫ったそいつを目の当たりにしてヒロとドクは言葉を失っている。 薄気味悪い骸骨の口元が動いて声を発している。 「よ・・こ・・せ・・」 「余の名はタレナガース・・・」 「ここには巨大なパワーを感じる・・・そいつをよこせ・・・」 ガシャァッ そいつは、自らをタレナガースと名乗るとフロントガラスを突き破って手をコアBOXに伸ばしてきたのだ。 全身の血が恐怖で逆流したかと思えた次の瞬間、変わって大声がこみ上げてくる。 「うわぁぁ~っ!!」 「きゃぁぁ~っ!!」 転げるように車から飛び出した二人は、土手の斜面を転がり落ちて行く。 タレナガースはヒロには目もくれず、コアBOXを抱きかかえるようにうずくまるドクの前に仁王立ちしたかと思うと、ドクの首に手を当てて片手で軽々とドクを持ち上げた。 タレナガースに片手で吊るされたドクの足が宙に浮いている。 「ドークッ!!」 叫んではみるが、ヒロも恐怖で足がすくんで動けない。 「これからは余が人間に代わって世界を支配するのだ。」 「さぁ、そいつをよこせ!!」 「う・・・ぐ・・・」 さすがに苦しさに耐えられなくなったドクの手からコアBOXが落ちる。 ガタッ。 地面に落ちた拍子にコアBOXのフタが開くのと同時に、落下の衝撃でソケットから外れたエディー・コアがコロコロッと地面を転がっていく。 それを見たタレナガースは、放り投げるようにドクを離してエディー・コアを取りに行こうとしている。 「ドク!!大丈夫か!?」 ドクに駆け寄るヒロ。 「ゲホッゲホッ・・・わ・・・私は大丈夫・・・それよりエディー・コアを・・・」 喉を押さえながら声を振り絞ってドクが叫ぶ。 「エディー・コアを守って!!」 「守れっつったって・・・」 「あんな化け物相手にどうしろってんだよ。」 躊躇するヒロにドクが哀願する。 「お願い・・・ヒロ・・・何とかして・・・。」 「ったく!!今日は厄日だぜ!!」 意を決したヒロが猛然とダッシュする。 「おりゃぁぁぁ~っ!!!!!!」 まさにタレナガースがエディー・コアに手を伸ばそうとしたその瞬間、ヒロがプロ野球選手顔負けのヘッドスライディングでタレナガースの手の下を滑り抜けてエディー・コアを手にした。 まさにタッチの差であった。 エディー・コアを手にしたヒロは一瞬、カプセルの中に煌めく渦巻く小銀河の様な美しい光景に目を奪われた。 |
が・・・ 次の瞬間、背後に迫るタレナガースの気配に我に返って決断に迷う。 しかし、熟慮している時間はない。 どうするべきか??? 「くそっ、こうなりゃヤケだっ!!」 ヒロは咄嗟にエディー・コアを口の中に放り込んだ。 そして・・・ ごっくんっ 呑み込んだのである。 「ごっくんって・・・の・・・呑んじゃったぁ!?」 後ろで見ていたドクが仰天して声を出す。 「ゴホッ・・・ゲホッ・・・」 呑みこんだ本人は、それどころではなかった。 健康診断で胃カメラを呑まされた時の事が頭をよぎったヒロだったが、それとは比べ物にならない苦しさである。 そして、その苦痛に代わって次に襲ってきたのは熱さである。 「な・・・何なんだよ・・・一体・・・」 身体の内側から焼け焦げそうな熱さがこみ上げてくる。 だが、それが不快な感覚では無い事に気づく。 体中にチカラが満ちてくる感覚なのだ。 シュゥ~ッ!! ヒロの身体から、蒸気ともオーラとも判らない気体状の湯気のようなものが立ち上っている。 「うおぉぉ~っ!!」 全身に力を入れて雄たけびするヒロの胸の辺りから青白い光が発散しているではないか。 そして、次の瞬間!! カァッ!! 辺りは目もくらむ閃光に包まれた。 思わずタレナガースもマントで顔を覆い、ドクも光を直視できず顔を背ける。 シュウゥゥゥゥ・・・・・ 閃光が消え、辺りに立ち上る湯気の様な気体が引いていくにつれ、そこに居るはずのヒロが見えてくる。 しかし・・・そこに見えたのは明らかにヒロとは違うシルエットだった。 |
黒いボディーに、額に渦を思わせる精悍なマスク、肩から胸にかけての重厚な甲冑、腰のベルト。 それはまさにエディー・コアの力によって変身したヒロの姿であった。 「こ・・・こんなことって・・・」 ドクは次の言葉が出てこない。 「こ・・・これは・・・オレは一体・・・」 ヒロも自分の両手を見つめているが、自分の身に何が起こったのかがまだよく把握できていない。 「・・・オレは・・・変身したのか?・・・」 「なんだぁ、お前は!!」 地の底から響く様な声を発してタレナガースが襲い掛かってくる。 タレナガースが繰り出してきたパンチに身体が自然に反応する。 バシィ!! 車のフロントガラスを軽く打ち破るほどのタレナガースの一撃を、片手で受け止める。 「何だと!?」 タレナガースも狼狽の色を隠せない。 受け止めたタレナガースの手をギリギリと締め上げながらヒロは名乗った。 「・・・オレは・・・」 「・・・エディーだ・・・」 「渦戦士エディーだ!!」 バムッ!! 名乗りと同時に放ったエディーの強烈なパンチがタレナガースの腹部にヒットした。 ファイティングポーズをとるエディー。 新しい正義のヒーロー誕生の瞬間であった。 |
「てあっ!!」 ドカッ!! さらに間髪を入れずエディーの足刀がタレナガースの腹に食い込む。 |
エディーの蹴りを受けて土手下から路上まで吹っ飛んだように見えたタレナガースだが、まるでスローモーションを見るように最後はふわりと着地した。 「フフフ・・・エディーだと?・・・」 表情こそ判らないが、タレナガースが不敵な笑い声を発して話し出す。 「よく憶えておくがいい。余はお前たち人間がタレ流す汚い水やゴミから生まれた悪の化身なのだ。」 「余は必ず、この世界をお前たちが住むことの出来ない汚くて臭い環境に変えて人間どもに代わって支配してやる。それが、余をこんな醜い姿に生み出したお前たち人間どもへの復讐となるのだ。」 「そして忘れるな!!お前たち人間どもが地球を汚くしている限り、余はどんどん強くなっていくってことをな。」 「エディー!!次に会う時を楽しみにしているぞ。は~っはっはっは!!」 笑い声と同時にバッ!!っとマントを翻すと、そこにはもうタレナガースの姿は無かった。 「き・・・消えた・・・」 緊張と恐怖から開放されて全身のチカラが抜けそうになるのをこらえてドクがヒロ・・・いやエディーに走り寄る。 「ヒロ!!大丈夫!?」 シュウゥゥ~ッ・・・ 変身が解けて元の姿に戻ったヒロが興奮覚めやらない口調でドクに問いかける。 「ドク・・・これが・・・これがエディー・コアのチカラなのか?」 「・・・・・・・・・・。」 ドクには返す言葉が見つからない。なぜこうなったか、ドク自信にも分からないのである。 「けど・・・エディー・コア・・・呑んじまった・・・」 「プッ!!」 ヒロのその一言で張り詰めた空気が一気に和んで思わずドクが吹き出した。 「まったく無謀なんだからぁ。」 「後先考えない行動してちゃリーダー失格だわね。」 「でっかいお世話だよ。アノ状況じゃ何にも思い付かねぇよ。」 ようやくいつもの調子の二人の会話が戻ってきたようである。 「確かな事はヒロが変身したって事。」 「それともうひとつ・・・これで・・・私のノーベル賞はお預けって事ね。」 壊れたコアBOXを拾ってドクがおどけてみせる。 先ほどの衝撃の為であろう、コアBOXは見るも無残に大破していた。 「ま、いいけどね。」 「いいのかよ?」 凹むそぶりを見せず明るく振舞うドクにヒロも軽いノリで返す。 「それにしても、タレナガース・・・とか言ったな。とんでもない化け物が現れたもんだ。」 「これからは、徳島の・・・いいえ世界の平和を守る為にタレナガースと戦ってちょうだいね。エディー!!」 「また、あの化け物とやり合うのかよー」 「ローカルヒーローが本物のヒーローになっちゃったなんて聞いた事ねぇよ。」 「しかも、こんな話し誰にも出来ないわよねぇ・・・。」 「たしかに・・・信じてもらえるワケないなー。」 「あはははははっ。」 最後は声を合わせて笑ったヒロとドク。 夕陽を背中に受けて歩く二人に、吉野川の川面を撫でる冷たい風がどこか心地よい冬の夕暮れであった。 こうして、徳島を舞台に正義のヒーロー「渦戦士エディー」と悪の化身「タレナガース」の果てしない戦いが今始まったのである。 タレナガースの野望を打ち砕き、徳島の街に再び平和が訪れるその日まで 戦え!!渦戦士エディー!! |
第1話 完 |
主な登場人物 | |
《阿波野 英雄(ヒロ)》 本編の主人公。 徳島のローカルヒーローチームのリーダー。 エディー・コアのパワーを得て「渦戦士エディー」に変身する。 《渦戦士エディー》 阿波野 英雄(ヒロ)が変身するエディー・コアのパワーを秘めた正義のヒーロー。 《祖谷乃 かづら(ドク)》 阿波野 英雄(ヒロ)と同じローカルヒーローチームのメンバー。 エディー・コアを開発した人物。 |
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《タレナガース》 狸の無念と産業廃棄物が結びついた悪の化身。 自らを醜い姿に生み出した人間に復習を誓い、人類に取って代わって世界を支配する事を目論む。 |